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2021
09 / 23 (木)

2021
10 / 23 (土)

映画『空白』公開 【現在は終了しています】

202109/23(木)~ 202110/23(土)

映画『空白』公開 【現在は終了しています】

「不寛容」と言われる時代。ちょっとしたボタンの掛け違えが人を殺し、やり場のない哀しみがまた悲劇を生む。人生の連鎖を描く傑作!

人の話を聞かない「怒れる」頑固オヤジが、娘の死という受け入れ難い事実に直面し、「哀しみ」という燃料で世にも恐ろしい暴走列車と化す。止まらない・止まれないその先で、たくさんの人を巻き込み、問題を拡大させてゆく姿は常軌を逸しているけれど、親として理解の余地もある。狂犬のような父親を演じるのは、正統派ヒーローからド悪党、奇人変人なんでもござれのカメレオン怪優・古田新太。悲哀と狂気の爆発。改めてその存在感に唸り、息を呑んだ。

オリジナル脚本を提げてメガホンをとるのは、うまくいかない人生の葛藤と、その先の暴力を描くことの多い吉田恵輔監督。今作の暴力は「見えない暴力」。強い者から弱い者への圧力、負の連鎖。例えば「親」と「子供」という力関係。被害者/加害者、消費者/事業者、支援者/利用者、学校/生徒/保護者、マスコミ/取材対象/視聴者。誰がどんなベクトルで力を行使するかで、それは親切にも暴力にもなり得る。

経営難に悩む小売店の店主が万引き犯に詰め寄り、無我夢中で逃げた犯人は車に轢かれ死亡。万引きをしたなら自業自得?追い詰めた店主が悪い?轢いた車が悪い?貧富に関わらず誰もがたった1つしか持ち合わせない「命」が失われた時、小さな町の交通事故が「事件」として祭り上げられ、さらなる燃料を投下しながら火だるまになってゆく。怒れる被害者父もさることながら、事故のきっかけを作った不器用で人生経験の乏しい二世店主(松坂桃李)の「ゆとり世代」的描かれ方、独善的でお節介なボランティアおばちゃん(寺島しのぶ)の空気の読めなさ、マスコミの悪意ある捏造など、少々ステレオタイプが過ぎる感はあるものの、大なり小なり「見たことがある」人々。誰もが心に埋められない穴を持っていて、その空白を埋めようともがいている。私も例に漏れずだ。あまりにズタボロに人生を狂わされた店主に、小さな小さな光が差し込むラストがいい。ゆっくり、じんわりと、心の隙間に染み込む傑作。必見!

ちなみに、予告編が事件の核心に触れるところまで若干踏み込んでいるので(ちょ、見せすぎ…)、鑑賞予定の方はできれば予告編はスルーして劇場へ!

© 2021『空白』製作委員会
※公開期間は目安です。全劇場での上映期間を保証するものではありません。
また、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の影響で、上映予定の変更が行われている場合もあります。

映画『空白』公開

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