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2021
11 / 05 (金)

2021
12 / 05 (日)

映画『アンテベラム』公開 【現在は終了しています】

202111/5(金)~ 202112/5(日)

映画『アンテベラム』公開 【現在は終了しています】

冒頭5分のワンカット長回しは必見!「奴隷制度」という負の歴史を題材に、人間の本質的な恐ろしさを暴く!表裏一体のヒロイン2人の謎めいた関係が紐解かれた時、言い知れぬ敗北感に襲われる心理スリラー。

広大なプランテーションを走り抜け、様々な人間模様を織り込んだ冒頭5分は、前奏曲に乗せた美しいワンショット長回し。そして、転がり落ちるような衝撃の急展開にガーン!ハリエット・タブマンを彷彿とさせる、綿花畑で働く奴隷「エデン」と、メディアで黒人の声を届ける魅力的な指導者「ヴェロニカ」。時代を隔て、対照的な黒人女性2人の生き様にスポットを切り替えながら、忍び寄る「闇」。キリキリと締め上がられてゆくスリリングな展開に、息ができないほど全神経が研ぎ澄まされ、脳内がスパークする絶品心理スリラーは、ただドキドキするだけでなく、歴史的な意味でも意義を感じる「考えさせられる」サスペンスだ。

起点となる「エデン」の時代はいつなのか?映し出される映像は、まさに南北戦争以前の「奴隷時代」そのものなのに、どこか違和感のある台詞が散りばめられる。「この伏線は何だ?」考えているうちに、「現代」の「ヴェロニカ」へと焦点が写され、画面は、最底辺の「奴隷社会」から、華やかな成功者の「上流生活」へ。2人の関係性は?この映画のタイトルロゴの鏡文字が象徴するように表裏一体となったヒロインの2人は、「同一人物」にも、時代を超えた「魂の共鳴」にも受け取れるが、そこはあえて観客に委ねられる。真実が紐解かれるラストに見えるのは、先祖代々、脈々と受け継がれ、無意識に刷り込まれたDNAの怖さ。人間の本質的な恐ろしさ。そして、ある意味一番の被害者とも言える第3の女性「エリザベス」の語られなかった物語に、事件の解決を見てなお、無力感に苛まれる。

チラシのビジュアルから「なんだかホラーな響きだな」と漠然と観はじめてしまったが、『アンテベラム』というタイトルの意味を知って観ると、最初からもっとたくさんのことに目を配れるのかもしれない。ラテン語のAnte(=Before)と、Bellum(=War)を混成した”Antebellum”とは、アメリカでは「南北戦争以前の南部の慣習」を指す形容詞だそうで、私は、観終わってから調べて、深く納得した。タイトルがズバリ「奴隷制度」。これをテーマにスリラーを撮ろうという時点で、超意欲作ではないか!ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』と『アス』の製作を務めたショーン・マッキトリックがプロデューサーであることが声高に宣伝されていて、正直その2作がイマイチ(途中までいいのにラストが釈然とせずモヤモヤする)だった筆者的には、不安要素でしかなかったのだが、比べ物にならない満足度の高さ!これらのジャンルを「白人至上主義スリラー」と名付けるとして、紛れもないトップ作の誕生。是非とも!

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※公開期間は目安です。全劇場での上映期間を保証するものではありません。

映画『アンテベラム』公開

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